書評──蜘蛛の糸

1918年に芥川龍之介が児童向け文芸雑誌『赤い鳥』に発表した掌編。ストーリーはシンプルで、生前の行いにより地獄へ落とされたカンタダを釈迦が見て、彼に一つだけ、蜘蛛を助けるという善行があったことを思い出し、蜘蛛の糸を垂らして救いを差し伸べる。カンタダは蜘蛛の糸を辿って這い上がっていくものの、眼下に罪人が我も我もと糸を辿って登ってくるのを見て喚いた刹那、糸が切れて地獄にまた落ちてしまうというもの。この三千字にも満たない短編の中で、地獄と極楽の明快な対比を織り込みながら、芥川はその顛末を「自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、カンタダの無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、御釈迦様の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう」と綴る。